GPSによる従業員追跡が波紋を広げる 〜 私生活が差別につながる可能性も
- 2015年5月21日
- ハイテク情報
国際電子送金サービス会社インターメックス(Intermex)の元幹部ミルナ・エイリアス氏は、会社から支給されたスマートフォンのGSP対応アプリケーションによって、会社が就労時間外の自分の行動を追跡できることを知り、そのアプリケーションを無効にした。同氏は、それが原因で解雇されたと主張して元雇用主を訴えた。
GPS対応技術で従業員を追跡する企業は増えている。この種の追跡機能は車両によく使われているが、最近はスマートフォンに搭載される例が急増している。
ワシントン・ポストによると、インターメックスは従業員にスマートフォンを支給し、「ゾーラ・ストリートスマート(Xora StreetSmart)」というアプリケーションを実装するよう指示した。
ゾーラ・ストリートスマートは、アップル(Apple)のアイチューンズ(iTunes)とグーグル(Google)のアップ・マーケットプレイスで提供されている。ゾーラによると、同アプリケーションの利用料は従業員一人あたり1日約1ドルだ。
従業員は同アプリケーションを使って出勤や退社の時間を記録し、各種の書類に記入することもできる。問題は、それが従業員の行動まで追跡する点だ。
この種のアプリケーションはすでにいくつも出回っている。たとえば、モバイル時間追跡アプリケーションの「ティーシーツ(TSheets)」は、勤務時間中の従業員の位置情報を収集し、従業員が退社するとGPS機能はオフになる。
エイリアス氏の弁護士によると、同氏は営業という職種がら、退社後も電話の電源を入れたままにしている。勤務日に動きを監視されるのは構わないが、休日にも追跡されることは受け入れがたいと主張する。
アバディーン・グループ(Aberdeen Group)が2012年に実施した調査によると、「現場社員」を抱える企業の62%が従業員追跡にGPSを利用しており、2008年の約30%から急増した。
GPS技術による従業員追跡は、運輸業界を筆頭に多くの業界では確かに有用だ。しかし、それが従業員の生活にまで踏み込むとなると話は別だ。
米自由人権協会(American Civil Liberties Union)のジェイ・スタンリー上級政策専門家によると、従業員の物理的位置追跡に関する指針はあまりない。しかし、位置情報をつなぎ合わせると、好きな店や医院、友人や恋人の住所など、従業員の私的生活についてかなりの部分が見えてくる。
また、それらの情報が雇用主による従業員差別につながる可能性もある、とスタンリー氏は指摘する。
この記事が気に入りましたか?
US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします
最近のニュース速報
-
ビットコイン半減は価格にいかに影響するのか 〜 最高値更新から乱高下、次の半減期が目前に
-
2024年4月22日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
ボルティモアの橋崩落、輸出・小売業者に影響
-
米国のMBA課程、人工知能分野の教育を積極化 〜 会社で求められる技能に学生側も関心を強める
-
2024年4月18日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
テスラ、急速充電網を開放~EV普及の節目となるか
-
2024年4月15日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
EV生産コスト、27年にはガソリン車より安く~ガートナーが予想
-
人間の労働力の方が人工知能より安価 〜 MITの研究、雇用機会の大部分は人工知能にまだ奪われないと結論
-
ドローン配送に現実味~運用範囲広がる
-
アマゾンや小売大手ら、頻発する返金詐欺で巨額の損害 〜 詐欺集団ら、ティックトックで協力購入者たちを募集
-
2024年4月1日 アメリカ発ニュース, 世界のニュース, 自動車関連
中国の自動車メーカー、慣行覆しEV生産を迅速化
-
2024年3月28日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
ウェイモ、テキサス州で社員向けロボタクシー運行