車の軽量化に接着剤が貢献〜1台当たりの使用量が大幅増加
- 2014年10月10日
- 自動車関連
輸送機器の製造で、溶接やリベット、ねじといった従来の接合方法に代えて接着剤が頻繁に使われるようになっており、軽量化が進む自動車業界でも使用量が年々増えている。
ウォールストリート・ジャーナルによると、市場調査IHSのシニアコンサルタントは、自動車、航空機、その他の乗り物で使われる構造用接着剤の世界市場は10年前の15億ドルから2014年には20億ドルに拡大すると見ており、拡大ペースは数年前の年2〜3%から現在は4〜5%に加速している。
増加の一因は材料の変化にある。アルミと鉄の接合する場合、溶接は難しいが接着剤は使える。また、炭素繊維などの複合材もねじより接着剤の方がふさわしい。フォードの15年型「F150」ピックアップ・トラックは、ボディにアルミを使っているため前モデルの3倍以上の接着剤が使われている。BMWの電気自動車(EV)「プロジェクトi」も炭素繊維製の座席部分が接着剤でつながれ、金属ねじなどは使われていない。ゼネラル・モーターズ(GM)のコルベットは、炭素繊維製の屋根とマグネシウム製のフレームが接着剤でつながれている。
接着剤大手にはヘンケル、HBフラー、ダウ・ケミカル、3Mなどがあり、塗装・接着剤関連コンサルティングのケムクエスト・グループ(オハイオ州)によると、一般的な車で使われる接着剤の量は10年前の18ポンドから現在は約27ポンドに増えている。
車や飛行機の製造では50年以上前から接着剤が使われている。車のフロントガラスは1960年代初頭から接着剤で固定され、GMが1980年代末に発売したミニバンはプラスチック製のボディ・パネルと鉄のフレームが接着剤でつながれていた。現在キャデラックのCTSとATSセダンは、普通のGM車の5倍の接着剤を使っている。理由の1つはボディを固定して振動を抑えるためで、担当者は「今後も全般的により多くの車に構造用接着剤が使われるようになる」と見ている。
接着剤は、軽量化で薄い鋼板が使われた車のガソリン給油口付近など、人が寄りかかる部分だけを補強する目的に使えるほか、車の雑音を減らす効果があり、リベットや溶接では見た目が悪くなる部分にも使える。フォードによると、2枚の金属板の端を1/2インチ幅で重ねてエポキシ樹脂で接着した場合、1平方インチ当たり6500ポンド近くの衝撃まで耐えられるという。
ただし、接着剤には有害物質を含む物もあるため、作業員は取り扱い訓練を受ける必要がある。また、接着剤は高温に弱いため、一般的にエンジン周辺にはボルトなどほかの接合方法が使われる。さらに、油がしみたあるいは汚れた部分にも接着剤は使えず、調整や修理のため簡単に部品を外せるようにしたい場合も、強力な接着剤は使えない。それでもケムクエストのダニエル・ムラッド最高経営責任者(CEO)は「最大の障害は心理的な部分」と見ており、「エンジニアが接着剤を使う経験を重ねればためらいの大部分は薄れるはず」と指摘する。
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