LGケム、パナソニックから王座奪取も 〜 電気自動車向け電池市場で競争激化
- 2015年8月31日
- 環境ビジネス
電気自動車(EV)向けの電池市場は現在、パナソニックの独壇場となっているが、今後はLGケム(LG Chem)が急追し、2020年までにパナソニックを追い越す可能性が高まってきた。
調査会社ラックス・リサーチ(Lux Research)によると、EV向け電池市場は2020年までに300億ドル規模に拡大すると予想される。
エンバイロメンタル・リーダー誌によると、パナソニックの市場占有率は現在39%と圧倒的だが、同社はテスラとの提携関係に依存しており、それがパナソニックの立場に脆弱性をもたらしている。
パナソニックにとって最大の競合社であるLGケムは、ゼネラル・モーターズ(GM)やフォルクスワーゲン、ダイムラー、フォードと契約をすでに結んでいる。ドイツ自動車メーカーのEV販売が拡大するのであれば、LGケムは、日産自動車を獲得するだけでパナソニックを上回ることができる。
「電池市場のビッグ・スリーであるパナソニック、LGケム、サムスンSDIは、市場占有率をかけて全面戦争を繰り広げている」「また、各社の戦略は大きく異なる」と、ラックス・リサーチのコスミン・ラスラウ氏は指摘する。上席分析家の同氏は、今回の報告書「Watch the Throne: How LG Chem and Others Can Take Panasonic’s EV Battery Crown by 2020」の主任執筆者だ。
同報告書には、特筆すべき市場動向として次の三つを挙げている。
1)EV市場はなおも黎明期にあり、テスラですら世界自動車販売市場の0.1%しか握っていない。ほかの自動車メーカーはEVの車種を急拡大しており、2014年に960万台を販売したフォルクスワーゲンは、2020年までに20車種でEVのオプションを投入する計画だ。
2)ルノーと日産の連合は、2020年に市場占有率が9%になると予想されるが、不確定要因の大きさのため、その予想はあてにならない。日産は、日本電気との合弁会社オートモーティブエナジーサプライから電池を調達しているが、コストと技術で課題を抱えている。ルノーに電池をすでに供給しているLGケムは、日産への電池供給という大きな契約を獲得できるかもしれない。
3)競争を優位に進めるうえで、次世代の技術がカギを握る。現行のリチウムイオン電池に次ぐ技術は、コストを下げ性能を高めるうえで重要だ。サムスン・ベンチャーズは、ソリッド・ステート電池を開発する新興のシーオ(Seeo)と、グラフェン・シリコン電極のメーカーのXGサイエンスに出資している。同様に、フォルクスワーゲンはクアンタムスケープ(Quantumscape)に、GMベンチャーズはサクティ3(Sakti3)、エンヴィア・システムズ(Envia Systems)、ソリッドエネルギー・システムズ(SolidEnergy Systems)に出資している。
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